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タルコフスキーの「サクリファイス」(1986)
ちょうど15年前に日比谷のシャンテ・シネで見た。
そのときはただその審美的なところだけしか見ていなかったが。
いやほとんど寝ていたが。
その後も何回か見た映画だった。
今日ふたたび見直して、映画が世界を丸ごと抱え込む力に打ちのめされた。
こうやってサクリファイスを再び見ることのできる人生なら、
悪くないじゃないか、と酔った頭で自己肯定する。
風が柔らかいけど激しく吹き続けている。
こわいくらいに。
目が痛い。
自分で決める。
逃げる事も居続ける事も。
ゴダールの映画に「勝手に逃げろ/人生」という傑作がある。
「勝手に逃げろ」はフランス語で「sauve qui peut」。
船が沈んだり、前線が崩壊したりした時に指揮官が部下に告げる最後の言葉。
生き残れる者は生き延びよ。
指示もマニュアルももうなく、あとはそれぞれの才覚だけで生き延びよという指令。
これからも大地震や原発の暴走はある。
芸術はそういうのをすべて含み込むだろうし、
自分もなんとかその端っこにでもしがみついていたい。
一人で立つことの絶望と清々しさ。
希望と確信を以て。
これでいいのだ。
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