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人でごった返す公園で私の名前を至近からぼそりと呼ぶ者がいる。
いや、呼ぶというよりつぶやくに等しいような自信のない声。
自信のない呼び声に自信をもって振り向くことは難しく、
なにかの聞き違いかとスルーするも、何度か自分の名前がつぶやかれて、
ついにその声の主と目が合う。その間は2秒もなかっただろうけど。

おれ覚えてるか、と問われるもすぐには思い出せず。

その白い顔を注視するうちに小学校時代のO君であることを、
顔の面影のみで想起することができた。

O君とはあまりいい思い出がないのだけど、
じつは小学校時代は苦々しい人物でもあったのだが、
その苦々しさの片鱗が言葉の端々に残っていたことに安心しさえもした。

ずっと自分にとってしこりのあった、言い残して去っていった人物かもしれないが、小学校の頃の怨恨を今さら打ち明けてもどうにもなるまいと思って、ただの無駄話に終始してさよならも言わずにまた別れた。

こんな時節に、こんな個人的な出会いがあるとは、このミスマッチぶりに救われた気がした。
いや正確に言えば、救われなさに救われたというか。

O君の横には彼の幼なじみのK君がいた。
K君とも懐かしい再会だったが、K君は伏し目がちな思慮深い人間に変わっていた。
細身の体型は相変わらず。
以前なんかの会議で自分の席の後ろに座ったが、自分だと確信がもてなくて声がかけられなかったという。
そういう性格の人間になったことに少し安堵した。

Oはわかんない場合でもとにかく声を発し、Kは躊躇し口ごもる。




鼻がぐずって、風邪なのか花粉症なのかわからぬ。
でも集中力が落ちている。
通奏低音のように精神生活を支配している原発での出来事。
でもそれも一日遅れとかのリポートで。
遅れて届く衛星放送のように、終わりが伝えられたときは、
もう昨日のご飯でも食べている時かもしれない。



昔、映画の脚本の先生に言われたこと。
「おれは自分が傷つくまで書く」

まだそこまで100歩遠く。




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