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2010.03.04 書かれたもの
残光


一日の気温の変化が激しい。
家に帰ると、外より家の中の方が寒かったりする。
外気温と部屋内の温度が均衡する前の様態に立ち会ってしまっている。

文章を書く依頼をよく受ける。
頼まれごとは断ってはいけないというのを信条としているため、報酬無報酬とか関係なく書く。

依頼された文章というのは、ある特定の目的に向かって書くので早く書けるし、「うまく」書く事もできる。いわゆる名文とか美文とかいったような印象を与える文章を脳から出力するように書いていく。

しかし、それは「伝達」あるいは「コミュニケーション」を主目的とした言葉であって、決してそれは創造の名に値するものではない。社会的な要請のもとで「正しく」書かれたものたちだ。それはそれでいい。

でもわたしがこのブログで書こうとするのものは、そういったものとは少し違う。どこかに向かって書かれているわけではないし、気分とか細部すぎる細部とか、落ちのないわたしの視線や情感をなんとか書こうとしている。

どちらの文章が誠実で真実なのかは、にわかには判断しがたいけど、ふとした時に出る吐息とかためらいといった形のない廃墟をあてどなく歩き彷徨う時間は重要で、それは日常ではあからさまにすることはない程の小さなものかもしれないが、でもそれを掬いとるのに使命感すら感じている。すらすら書いていくことになんの価値もない。ほんとうに書くことは苦しく、全身に汗と冷汗と脂汗をかく行為なのだ。

既に知っていることを書くことは重罪である。書くことは知らない場所へ行くこと。自戒をこめて。


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