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2010.02.19
雪のエチカ

あさがた雪がちらついていた。
車のフロントガラスに雪が落ちてもすぐに溶けることなく、しばらくガラスに張り付いていた。
寒さが極みに達すると雪国に住んでいた頃のことを思い出す。
雪国の冬は長い。果てしなく。
だいだい10月末くらいから4月の頭くらいまでが冬のイメージだ。桜は4月の末頃咲く。ゴールデンウィークにさしかかることも。だいたい1年の半分は冬ということになる。8月もお盆を過ぎれば、夜は肌寒いものとなる。すべてが煌きのもとにある夏は天国そのものだった。あらゆる生命体が伸び上がっていた。道端の小さい無人の小屋の中で野菜が売られているが、11月に入るとぱたっと野菜がなくなって長い冬がこれからやって来ることを知らせた。ため息とともに。冬はすべてが凍結していく灰色の世界だった。マイナス15度は寒いというより痛かった。
それゆえ皆が春を待ち想う気持ちもかなり強いように思えた。春は待ち遠しいというより切実な願いのようでもあった。それはやはり九州なんかとは違うシビアさがあった。雪は楽しかったり美しかったりするものではなく、はっきりと生活を阻害するものとして、われわれの前に対峙していた。季節の節目節目に祭りが あった。現実の季節気候とぴったりと符号していた。
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