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スーツや鞄、革靴などの服飾は安価で売られているものと、一流の職人が仕立ててつくられたものとでは、物に宿るオーラが違う。
なかでも自分にとって時計というものは、非常に気になるアイテムで、人がどのような時計をしているのかも気になるし、買うことはないけれど、店頭に並べられているいい時計はずっと眺めていても飽きない。
時計はどこかの社名にもなっているように、「精巧」の代名詞でもあるだろう。そしてもっとも身近なもの。われわれの時間=人生を端的に指し示すもの。ブランド志向はないが、安い時計を身につけるのはためらわれるこの感覚。
スイスには独立時計師という、会社組織に依存せずに時計を創り上げている職人がいるらしい。そのなかでも帝王とも呼ばれるフィリップ・デュフォー氏が昨日テレビに出ていた。
岐阜の高山を彷彿とさせる雪深い渓谷で静かに静かに彼は仕事をしていた。
ブラウン管を通しても彼の仕上げた時計の完全性はピリピリと伝わり、息を飲むような美しさだった。
組織では納期の関係で妥協ばかりしていたが、独立してからは納得がいくまで自分の仕事と向き合える、と語っていた。この贅沢さが羨ましい。
日本におけるものづくりは、中国の安価な労働力におされて贅沢に時間をかけることはできない。木工でも昔は箱物ひとつ作れば半年くらいはゆっくりできたという。
農作業をしていても思うのだが、今は時間が金の価値に変わってしまい、農作業をしながらじっくりと自然と対話するなんてことは無理で、厳しく時間と人件費がリンクし、製品コストの値段に跳ね返る。
そんなことは当たり前だと言ってしまえばそれまでだが、時間とお金が等価値である世界に、希望などあるわけがないと思う。
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