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2010.02.07
こっちとあっち

きのうの寒さは、いままでの寒さとは一段強度が違った。
これくらい寒くなると、背筋の芯のところまで寒さが届いて、清々しささえ感じる。
夢を見る。死んだ人のことを考えている。死んだ人と握手したりしている。
事故や戦争でも、災害でも自殺でも生き残った者は自身を責める。サバイバーズギルドとも呼ばれる。生き残ってラッキーではないのが人間をすることの難しいところ。ずっと問い続ける。自分はなぜ生き残ったのか。自分にはなにかあの時できたのではないか。
此岸と彼岸。here and there.
どちらかが片方の側を見ると懐かしく思える。
小学校の低学年の頃だったか、木登りをしていて、滑り落ちてしまい、ちょうど枝の股のところに首がひっかかって、宙づりの首つり状態になった。はじめの10秒ほどは滅茶苦茶パニクってじたばたしたのだけど、もうどうしようもなくて、ああこれで死ぬんだとその状況を受け入れたら、こころが鎮まって、驚くほど冷静になり、ひっかかった木から見える景色がとてもいとおしいものに見えた。死んでここを離れてしまうことに懐かしさに似た感情を抱いた。その時、此岸が彼岸になっていた。これらは数秒の出来事で、いつの間にか足を幹に絡ませ、脱出していた。でももう見える世界は以前とは違って見えた。いま、ここの世界が夢の図で地は別にあるんじゃなのかと漠然と思うようになった。でもそれゆえにこそ、この夢の世界が貴重で重大なものに思えてくる。
この感情。懐かしさに似た、夕陽を見ているときのような、このなんとも言えないあま切ない感じは、時折不意に脈略なくやってくる。とくに身体的にきつい時にやってくる。運転しているときとか。強い時はなんだか涙が自然に出ていることもある。でもそれは厳しいものではなくて、恩寵のような、たとえて言うとやはり夕陽とか朝日のセピアの優しさに似ている。セピアはつねに懐かしい。未来でも。
そしてなぜかすごく元気が出る。
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