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2009.11.19
車の中と夢

車のなかに入ると外界との音が遮断されるため、ドアを閉めた瞬間に自分の殻みたいな世界に入ることができる。とつぜんにシートの擦れる音とかシートベルトの引っ張られる音とかがはっきりと聞こえる世界に入る。本来ちいさいはずの音が、この空間では大きく聞こえる。それがとても心地いい。そうした車の中から見える外界は括弧にくくられたように感じられる。刑事の視線。
家の近くにぼんぼん縄文時代とかの遺物が出てくる土地がある。地層の関係か化石とかの埋まった岩も多く採れるらしい。その岩を自分の邸宅の庭に置いている爺ちゃんがいて、立ち話をした。30分くらいその庭に置いてある岩に眠った化石の説明をしてくれた。これがシダ類でとか、これがなんとか貝でとか、これがなんとか虫やと。でもその指すものを見ても素人の僕にはただの傷やシミにしか見えなくて、何度も目を凝らしまくって見てもやっぱりシダとかには見えなくて、この爺ちゃんは巨大な妄想の世界にいるのだろうかと思った。それはそれでいい。みなそれぞれ偉大な夢を見ている。死したときに、はじめて目がさめる。賢者は生きながらにして覚醒するだろう。これは偉大な夢を見ているんだなと。
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