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2009.11.14 垂涎
kabe01


地元のテレビ局が主催するフリーマーケットに参加していて、オープン前に他の人のブースを歩いて見ていたら、うわーこれ欲しいというものに遭遇。レトロかつポップなデザインの視力検査表で、Cのマークが並んでいる列の中に一列お魚が並んでいて、お魚の顔の向きでたぶん右とか上とか言う案配になっているデザイン。背景が真っ黒で、白抜きのグラフィック。しかも100円。しかも額縁つき。物欲がむらむら。ほしいと思ったら絶対手に入れたい性格。はげしい衝動。でも参加者の特権だからといってオープン前に買うのはいかがなものかと思って、こういうものが出品されている事実を来る人は見ることができるのもフリーマーケットの楽しみのひとつだと思い、オープンしてからまた来ようと思った。オープンの定刻前から人が増えだした。定刻すぎて2、3分して行ったら、もう売り切れていた。

価格は違えど、同じものはネットかなんかで売っていることだろうけど、自分が欲しかったのはあの場所あの時間に置かれていたあのお魚の視力検査表、少し埃のついた、額縁が古ぼけていたあれで、それは代替不可能だし、ほかでは慰められない。物にも記憶がある。いや物にこそ記憶がある。物語と言い換えてもいい。じぶんはその物語を買いたかった。



このテレビ局が主催するフリーマーケットは価格感覚がおかしくて、ほとんどが100円とか50円で売られている。神田の古本屋街に持っていけば何千円もするのではないのかと思うような本が平気で置かれている。昭和53年発行の季刊「銀花」第三十五号秋を購入。50円だった。


そのなかで日本人と魚の鯛について書かれた文章と写真がすばらしい。描写が淫靡でユーモアの域にまで達している。

「熱湯をかけたとたん、鹿の子絞りのように赤く縮み上がる皮、ガラスの破片のごとく飛び散るうろこ、悩ましいほど白く透明な身。料理する瞬間、瞬間にとらえた魚の美」

「いきのいい真鯛が手に入ったら、まな板にのせる前にとくと眺めてほしい。無数の宝石を全身にまとったようなその姿(中略)うろこを引いたらその一片を日に透かして見てほしい。真ん中近くに見える同心円は鯛の年齢である。両側の胸びれの根元には魚の形をしたおもしろい骨がある。鯛の場合には、その名も“鯛の鯛”と名づけられているが、魚には自分自身の形とそっくりの骨があるのだという」


ハウツー的に鯛のおろし方などが記述されているが、まるで小説のように読める。
おれって、意外にも魚が好きなのかもしれん。


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