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akarui heya


はるか上空から響いてくる旅客機のエンジン音を聞いていると、
空全体の広がりとか質量とか密度とかに触れているような気がして心地よい。
いや触れているというより耳を通して空全体と一体になっているのかもしれない。

自分の家から列車の線路までは絶妙にちょうどいいくらいの距離感で、
電車が通過すると、その列車の音がいい具合に柔らかく響いて聞こえてきて、これまた心地よい。
その音が響くと、いままで意識していなかった見えていなかった空間が色鮮やかに浮き上がってくるような。
特に夜に響いてくるそれは、哀愁を帯びて、自分を抽象的な思考に誘う。
まあ田舎なので1時間に2本くらいしか通過しないけど。

窓を開けると、いろんな音が聞こえてくる。
小鳥や犬、洗濯機の音、子供の会話、バイク、自動車、自分のキーをタッチする音…。
それらにすべて遠近がある。
なんにも聞こえなくても、なにかで充たされている。

不謹慎な質問だけど、目が見えなくなるのと耳が聞こえなくなるのとどちらかを選べと言われたらどうするかということを聞かれたことがあって、自分は耳が聞こえなくなる方を選ぶと言ったら、その人は目が見えなくなる方がいいと言い切って、なんでと聞いたら、無音の世界って相当寂しいよと言われた。

それを聞いて初めてその時、無音の世界というものを想像した。
確かに寒々とした世界を想像してしまった。

視覚は、本質を見ることよりむしろ本質を見損なうことの方が多いかもしれない。
聴覚は違う位相において、世界と直接結びついているような気がした。

恋愛や友人関係においても、相手の声の質とかトーンとかペースとかが無意識のうちに外見より重要になっていたりするのは、そういうこととも関係があるに違いない。



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