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2009.08.16 中上健次
kenji bochi
外に出ると、湿気が肌にまとわりついた。暑いなあ、と思ったらふと中上健次は暑い時期に死んだのではないかと思って、ウィキで調べると命日が8月12日になっていた。

「夢をみていたはずだった。覚えていようと夢の中で思った。だがめざめると、忘れていた。文昭が、かれをみてわらった。日が当っていた。なにかが変わってしまったように思っていたのに、いつもの朝と変りはない。「秋幸、はよせんかい」と母が言った。死んだものに、この朝がないというのが不思議だった。干物を焼いたにおいがしていた。兄に、あの時、刺されて死んでいたら、自分もこの朝を見ることも、感じることもない。」『岬』

「汗を流し、土を相手に働く。一切を捨ててしまいたい。過去も未来もなく、ただ自分がここに石のように在る。草のように在る。風が国道の方から突風のように吹いた。風は草をゆすった。秋幸は見た。秋幸は体を起こし汗をタオルでぬぐい、文昭が五郎と一緒にコンクリの型板をはずしている横を通って、足場の丸太を置いた上にあったバケツをつかんだ。」『枯木灘』

暑さを感じ、なぜか中上の世界が恋しくなって、文庫本をぱらぱらめくる。特に『枯木灘』はどこを読んでも、その才走った筆力に圧倒される。神話のような強度の中に、秋幸や龍造の体臭が匂い立ってくる。

写真は以前、中上の出生地、和歌山県新宮にあるお墓に参ったときのショット。近くにイオンかなんかの大型店舗ができていて、中上の描いた路地の風景は完全に霧消していたのが、また中上的だった。

裸眼で見たせいか、森三中をひさしぶりにテレビで見たら三人とも綺麗になっているような気がした。
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