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2009.08.16
内山くん

お盆の連休も今日で終わりかと思うと少し憂鬱になるが、連休前の喜びとこの憂鬱感は差し引きゼロかとも思うと、人生よくできているなと思う。
以前、テレビでさんまが語っていたおでぶタレントの内山くんについて。
内山くんはテレビに子役として出始めた頃、引っ込み思案で恥ずかしがり屋で自信がなくてオドオドし、タレントとしてはとてもやっていけない感じだったらしいのだが、ある時収録でバスケの試合をして、その時まぐれだったけどスリーポイントシュートが決まって、その日から内山くんは劇的に自信漲る、前向きで積極的な人間にガラリと変わったという。さんまが「内山くんが変わった日」と伝説的に忘れ得ない日として語っていた。
自分を規定する自己イメージは鉄板のように固いが、実は日々の思い込みによる習慣の産物で、細胞の更新を考えれば、1年前の自分と今の自分はまったくもって別人だ。それでも自己に固執してしまう。手放すのは怖い。それが大いなる幻影だとわかっていてもしがみつきたい。でもある時、内山くんにおける「スリーポイントシュート」のようなものが、自己イメージをあっさりと崩壊させる契機となることがある。自分が必死でしがみついていたものが、実は使い古されたボロきれのようなものにすぎないことに、気付く。それは理屈ではなく、自分の全存在で気付く。恐ろしいのは逆の場合もあり得ることで、蓄積された自信が高かった自己イメージが、ちょっとした契機で崩壊する。
スポーツ選手を見るとこのへんの自信の獲得と喪失の劇が残酷なまで鮮明に表出していて、イチローなんかみると本人は辛いんだろうなと思う。でもその辛さこそが彼の生への強度を形作っていて、野球はやめられないものとなっているのではないか。
地元Jリーグの大分トリニータが信じがたいほど絶望的な連敗を続けている。その時の選手の負け癖はどのようにして克服されるのだろうか。それは監督の交代であったり、開き直りであったり、日々の練習であったり、新規選手の加入であったり…。ここにおけるスリーポイントシュートはなにか。やはりまぐれでも1勝することだ。
重要なのは、自信のないなかで1勝することで、自信がついてから1勝することではない。惨めなかで勝利するという難題に、秘蹟があるのでは。トリニータがんばれ!
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